現在、日本におけるソフトウェア開発の殆どは、ウォーターフォール型と呼ばれる手法です,70-673。この開発手法は、初期にシステムに対する要件を正確に決め、前工程を誤りなく完了させ次に進むことが求められます,7303。しかし現実的には、要件の間違いが後で判明することや、開発着手までに要件を確定できない場合もあり、これらに起因するシステムトラブルや開発の遅れが生じています,117-303。
このように、初期段階で顧客ニーズを全て把握し要件に反映することは難しいにも関わらず、最近のソフトウェア開発では、ビジネス環境の変化への対応、これに伴う要求の変更、ソフトウェアの市場投入や投資効果の確認の迅速化が、以前にも増して厳しく求められています。
このような状況において、要件を最初に決めずに開発に着手できるアジャイル型を中心とする非ウォーターフォール型の開発手法は、特にスピードが求められる一般向けのWebサービスなどの分野での導入が期待されています。しかしながら、日本のソフトウェア開発においてはウォーターフォール型開発を中心にした商習慣が確立されてきたため、アジャイル型開発では、特に契約問題が既存の一括請負契約には適さず、日本のユーザー企業およびベンダー企業への普及は進んでいません。
そこで、IPA/SECでは、ウォーターフォール型開発及びアジャイル型開発の経験が豊富な実務者、契約に詳しい専門家など、産学官の有識者をメンバーとした「非ウォーターフォール型開発ワーキンググループ」を設置し、これらの課題について検討してきました。この度、日本におけるアジャイル型開発に適したモデル契約書案2種を含む、同開発の現状と課題をまとめた報告書を公開しました。